【力学】土踏まずの構造から内側アーチパッドがダメな理由を考察

「土踏まず」の役割とは?

歩行は、「遠位が固定された状態で近位が動く運動」だと考えています。

土踏まずが無いと、遠位である「」がうまく固定されません。

つまり、安定性を失います。

そのため、近位の動きは「」の役割を代償するように働きます。

   

とは言っても、ただ安定しているだけではいけません。

歩行という動的な運動の中で、各相に合わせて「」が適切に機能することが重要です。

」が機能するための重要なポイントが土踏まずになってきます。

そんな土踏まずの大きな役割は、

  • 衝撃吸収
  • 安定性
  • 姿勢制御
  • 推進性

とされています。

どれも、土踏まずによって「」が機能することで可能となるものばかりだと思います。

 

特に衝撃吸収は土踏まずも重要ですが、足だけで行うものではありません。

ただ、一番初めに地面と接するのは足ですから、足が崩れていてはダイレクトに近位分節へ影響を及ぼします。

アーチの力学的構造と原理

土踏まずは、その形状から「アーチ」と呼ばれています。

アーチの力学的な構造と原理について考えていきます。

原理 荷重を圧縮力で支える構造

圧縮力が働いている時、アーチの下側で引張力が働いています。

 

キーストーン アーチの要

 

アーチの土台 土台の状態によって、負担がかかる部位が変わってきます。

     

    

内側縦アーチの構造

内側縦アーチは、踵骨距骨舟状骨内側楔状骨中楔状骨第1,2中足骨で構成されています。

キーストーン 舟状骨

アーチの土台 踵骨・第1,2中足骨頭

舟状骨は、距骨から伝えられる負荷を分散し、地面に接する踵骨第1,2中足骨頭に伝える役割を担っています。

構造上のアーチとの最大の違いは、土台が動くので、アーチの頂点に負荷がかかりやすいということです。

  

アーチの頂点に負荷がかかると。。。

アーチの上側には圧縮力下側には引張力が働きます。

 

つまり、人の足のアーチには常に引張力が作用していることになります。

常に引張力が作用するというのは、常に足裏の組織に力を求めていることになると思います。

そのため、ショパールやリスフラン関節の下には強力な靭帯が存在します。

 

また、土台には水平方向への力が作用します。

土台が止まらないとアーチ構造が破綻してしまいます。

この土台を止める役割を足底腱膜が担っています。

 

足の土台が崩れるということは、

常に引張力のかかった状態である足に、さらに負担をかけているということになります。

何のためのトラスか?

支点 距舟関節

構成要素 前方:舟状骨・楔状骨・中足骨  後方:踵骨  底辺:足底腱膜

荷重により前方・後方が広がろうとするのに対し、

足底腱膜による張力がそれを止めるブレーキとして作用します。

 

中足骨頭踵骨の接地した環境において、足底腱膜の張力によってアーチを適切にたわませます。

アーチが適切にたわむことによって、衝撃緩衝や立脚中期における足底接地の成立を可能にします。

Point 歩行:立脚中期の衝撃緩衝・足底接地

何のためのウィンドラスか?

支点 MTP関節

足底腱膜は、足趾基節骨まで付着しており、MTPの背屈により前方に巻き上げられます。(①)

結果として、踵骨が前方に引き出されてアーチが挙上します。(②)

アーチが挙上することによって、アーチを構成する骨同士に圧縮力が働き、剛性安定性が高まります。(③)

 

ウィンドラス成立の条件は、

距骨下関節が回外」していること。

距骨下関節が回内の状態では、踵骨が前方に引き出されません。

母趾MTPの背屈が制限されるため、アーチを挙上することができなくなります。

効率的な歩行の蹴り出しには、足部の剛性と安定性が必要と言われています。

距骨下関節回内では、足部の剛性や安定性が得られないため、蹴り出しは減少・消失します。

Point 歩行:立脚後期の蹴り出し

足底のメカノレセプター

メカノレセプターとは、固有受容器のことを言います。

圧刺激に対し変化を感じとります。

 

足底では、母趾母趾球を含めた前足部,外側の中足部,に集中しています。

 

「観察による歩行分析」より引用

これは、足圧の軌跡と言われているものと似ています。

  

 

足裏はこのメカノレセプターのある場所を接地させることで、効率の良い安定した歩行を可能をしています。

注目すべきは、「土踏まず」の部分にはメカノレセプターが無いということです。

Parking Functionと内側アーチパッド

Parking Functionとは、Klein-Vogelbach理論に登場するものです。

腕や脚が各分節ごとに安定していれば、その部位の筋緊張が緩まるというものです。

 

足において、地面に接している部分は踵骨と中足骨頭であり、足底側の組織による張力でアーチ構造を保持しています。

内側アーチパッドの挿入によって中足部が下から支えられることで、中足部は安定し、足底の圧は分散されます。

 

舟状骨が支持物によって支えられていると、アーチを支えている足底側の組織の緊張は低下します。

内側アーチパッドがダメな理由

内側アーチパッドは、メカノレセプターが存在する以外の部位に感覚入力することになります。

足底全体の圧は分散され、足底のメカノレセプターは適切な圧刺激を感じ取ることができません。

また、Parking Functionにより、足底組織の緊張は低下します。

足底組織の緊張低下は、トラス機構の機能不全を招き、結果として内側縦アーチは低下します。

以上の理由から、内側アーチパッドは良くないとされているのではないかと私は考えています。

本来かかるべきところに圧がかかっていた方が良いのかもしれません。

解剖学・運動学的な観点から見た内側アーチパッド

横足根関節の中でも、距舟関節は球関節に非常に近い形状をしています。

つまり、運動軸が多く動きやすい形状をしていることになります。

 

土踏まずが潰れるということは、一見すると舟状骨が下がっているように見えます。

足の動きを紐解いていくと、第1中足骨は背屈・回外、距骨下関節は回内しています。

これによって、舟状骨の位置は、距骨や第1中足骨底・内側楔状骨よりも相対的に高い場所に位置していることになります。

 

このような状態で、内側アーチパッドを挿入すると、舟状骨をさらに突き上げ内側縦アーチの低下を招くのではないかと考えています。

まとめ

アーチパッドがダメな理由を、土踏まずの物理的な構造や役割から紐解いていきました。

とは言っても、世の中にはたくさんのインソールが存在します。

その多くが、内側アーチパッドを使用しています。

ということは、ある程度の効果が証明されているということでよね(^^;; 

 

ですから、個人的に内側縦アーチパッドは

一時的な治療の手段として使用する物」と捉えています!

私は、インソール=理想の足に持っていくための手段と考えています。

対象者に合わせて作成することがやはり大切なのかなと思います。

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