理学療法士でありながら、私は歩行分析が大の苦手でした。
就職してから2年ほどは、周りが見ている印象と自分の印象が真逆なことがたくさんありました。
モヤモヤする気持ちを抱えて仕事をする中で、歩行が少しだけ見えた瞬間がありました。
それは、
好きな分野である「足」から歩行を捉えていた時でした。
「足」から歩行を捉えるために、ステップ動作などのスクリーニング評価と歩行の共通点を考え、調べたりしました。
そんな事を繰り返していくことで、歩行分析にも多少の自信を持つことができてきました。
今回は、そんな「足」から歩行を捉えるために、歩行中に「足」で起きている現象を紐解いていきます。
立脚初期〜荷重応答期:衝撃吸収
最大の役割は衝撃吸収。
ヒールロッカーと呼ばれる踵の接地から、立脚期は始まります。
以前の記事でも投稿している通り、その最大の特徴は「形から生まれる動き」です。
丸い形状をしている踵は、接地するだけで前に進む力をもたらします。
例えば、ヒールロッカーが生じないと、その後に待っているアンクルロッカーやフォアフットロッカーにも影響を及ぼすことが考えられます。
ヒールロッカーの次に、距骨下関節の回内運動が生じ、衝撃吸収が行われます。
距骨下関節回内運動による衝撃吸収には2つの仕組みが存在します。
一つは、距骨が底屈し、距腿関節の位置を低下させるもの。
もう一つは、距骨が内転し、下腿の内旋とそれに伴い膝関節を屈曲させるもの。
膝関節屈曲にとって、下腿の内旋は必須条件となります。
例えば、距骨下関節の回内制限は、この膝関節の屈曲を阻害します。
すると、その衝撃は骨盤や腰椎へ伝わってしまいます。
立脚中期:回内から回外への切り替え
足底接地で始まり、踵が離地するまでが立脚中期とされています。
中期は前半と後半に分けて考えていきます。
というのも、立脚初期の影響を受けている部分と、立脚後期の推進に備えている部分で役割が違うためです。
前半では、距骨下関節の回内が維持され、後半につれて回外方向への運動へが生じます。
後半に生じる距骨下関節の回外運動は、反対側の下肢が前に振り出されることによって成り立ちます。
反対側の下肢が前に振り出されると、骨盤は立脚下肢に対して外旋し立脚下肢を外旋させます。
立脚は閉鎖的運動連鎖(CKC)の状態であるため、立脚下肢の外旋は、距骨の外転とそれに伴う距骨下関節の回外をもたらします。
立脚後期:母趾荷重
立脚後期で重要なことは、「いかに母趾に荷重を行うか」だと考えています。
その要素として、3つほど紹介していきます。
1つ目は、「ウィンドラス」足底腱膜による巻き上げ機構。
立脚後期で最も特徴的なのが、足底腱膜による巻き上げ機構「ウィンドラス」です。
実は、このウィンドラスは2種類存在します。
中足趾節関節(MTP)の
横軸で行われるもの
斜軸で行われるもの
より強い力を得られる横軸での作用が理想的です。
というのも、横軸を構成する第1中足骨の骨頭は、他の中足骨頭よりも大きいことが影響しています。
2つ目は、第1中足骨の底屈。
立脚後期に「ウィンドラス」を機能させるための条件となります。
そもそも、立脚後期の蹴り出しには、母趾MTPが65°背屈する必要があるとされています。
この背屈可動域の確保を可能にするのが、第1中足骨の底屈と長腓骨筋の作用になります。
中足骨頭の下にある種子骨という骨に沿って、底屈した第1中足骨が後方へ滑るように移動します。
この種子骨の後方滑りが、背屈軸を後方へ移動させることで、母趾MTPは65°の背屈が可能となります。
実際に、母趾球を上に持ち上げた状態(第1中足骨背屈位)と下に下げた状態(第1中足骨底屈位)で母趾の背屈する具合を確かめてみてください。
個人差はあるでしょうが、持ち上げた状態では母趾が背屈しにくくなるのが体験できると思います。
3つ目は、長腓骨筋による外側ユニットの外返し。
長腓骨筋の役割は、足部の内側に体重を移動させることです。
立脚中期後半〜立脚後期にかけて外側ユニットを外返しさせることで、足部の内側に体重を移動させます。
この作用を可能にしているのが、横足根関節ロックです。
第1中足骨底屈と長腓骨筋による外側ユニット外返しの合わせ技によって、最終的に母趾MTP横軸に体重を乗せていきます。
これが成立しないと、MTP斜軸の運動によって蹴り出しが行われることになります。
横軸での蹴り出しが何故理想的なのか?
逆に、斜軸での蹴り出しの何がまずいのか?
答えは、足関節からMTP軸までの距離にあります。
実は、斜軸よりも横軸の方が距離が長いです。
そのため、より大きなてことして作用し、効率的な蹴り出しが可能となります。
逆に、斜軸の場合は距離が短いため、より大きな筋力を必要とします。
その結果、身体にとっては非効率的な蹴り出しとなってしまうのです。
最後に
今回は、歩行中に「足」で起きている現象を紐解いていきました。
私自身、まだまだ臨床に落とし込めていない部分もあります。
今後も少しずつアップデートしていきたいと思います。
参考資料:ThomasC.Michaud,臨床足装具学 生体工学的アプローチ,医歯薬出版株式会社,2005年.