外反母趾だから幅広の靴を履く
外反母趾で悩む人と靴の話をすると
「私は幅広だから大きい靴じゃないと履けないの」
っていう人が多いです。
足を学ぶ者からすると、
むしろ逆効果だよ・・・と思うこともしばしば
大きい靴って、靴の中で足がずれるしインソールの調整も難しいんです。
仮にインソールを作ったとしても効果は減少します。
なぜ、
外反母趾=幅広=大きい靴
という考えになるのか?
実際、母趾球の部分が靴に擦れて痛いということもあるかと思います。
ですが、足の機能を知れば、幅広=大きい靴というのは逆効果であることがわかるはずです。
また、施す側としても、足の機能を知ることは、インソールの調整や靴選び・フィッティングに非常に重要なことだと思います。
足の機能を重視した靴のフィッティングと踵の倒れこみ・横アーチの調整方法
足の機能に基づき評価を行うことの重要性
それは、効果的なインソールの調整や正しい靴の提案など方針を決めるために必要不可欠である。
足の中でも特に重要な「踵」と「横アーチ」の関係とは・・・?
第1回目は、外反母趾と密接に関わっている横アーチの動きを紐解きます。
そもそも横アーチとは、
足の指の付け根にあるのが横アーチです。
この、横アーチの低下は、いわゆる開張足と呼ばれ、外反母趾や内反小趾を始めとした様々な足のトラブルを引き起こします。開張足になると足幅が広がったと感じ、大きいサイズの靴を選ぶ方が多くいます。大きいサイズの靴を履くことで、さらなるトラブルにつながります。
足の荷重伝達
足は踵側とつま先側の大きく2つに分類されます。
つま先側のことを前足部と呼び、踵側のことを後足部と呼びます。
膝下の下腿と言われる部位から加わる荷重は距骨という骨を介して後足部と前足部に分散されます。
その割合は、
前足部が1/3、後足部が2/3とされています。
つまり、足部全体を見ると、前足部は1/3しか体重を支える力がありません。
逆に言うと、後足部である踵が体重のほとんどを支持していることになります。
ユニット
ユニットには内側ユニットと外側ユニットがあります。
内側ユニットには、
距骨・舟状骨・内側・中間・外側楔状骨・第1・第2・第3中足骨とそれぞれの趾骨が属します。
外側ユニットには、
踵骨・立方骨・第4・第5中足骨とそれぞれの趾骨が属します。
内側ユニットに属する距骨が内側へ移動すると、内側ユニットに属する他の骨も同様に内側に移動するというのがユニットという考え方です。
ユニットで生じる動きについて、さらに詳しく見ていきましょう。
内側ユニット
後足部・前足部への体重分散は距骨を介して行われます。
そもそも、距骨は踵の内側に位置します。
そのため、距骨への荷重自体が距骨を内側へ倒すような仕組みになっています。
この時、距骨は
底屈・内転します。
この力が舟状骨に対して前方へ押し出すように伝達されます。
また、距骨の頚は体部に対して約15°前内側を向いているとされています。
この傾きにより、舟状骨には前方だけでなく、内側へ押し出す力も伝達されます。
舟状骨の形状から、内側楔状骨は前内側へ押し出されますが、中間及び外側楔状骨は前方へのみ押し出されます。
外側ユニット
荷重により距骨は底屈・内転していきます。
このとき分散された荷重により踵骨は内側へ倒れこみます。
この動きは、隣接する立方骨に対しても内側に倒れるように伝達されます。
さらに、踵骨が前傾することで立方骨は前方へ押し出されます。
立方骨は第4・第5中足骨と関節をなすため、こちらも同様に内側に回転します。
横アーチ
正常では、内側及び外側ユニットのシステムが横アーチをたわませて衝撃を吸収しています。
しかし、破綻した足の場合は、横アーチの低下として現れます。
ユニットで解説したメカニズムにより第1中足骨は内側に広がりつつ背屈し、第5中足骨は外側に広がりつつ背屈します。そのため、第2中足骨が相対的に低下しているように見えてしまいます。
第2列の構造
横アーチのイメージをより鮮明にするために、第2中足骨の構造を見ていきます。
第2中足骨は、楔状骨の形状や配列からほとんど可動範囲がありません。
このことから、第2中足骨が横アーチの頂点であることは揺るぎません。
実際に、骨模型の第2中足骨を押し込んでみました。
このとき、大きく動くのは第1及び第5中足骨であり、第2中足骨にはほとんど動きがありません。
ユニットの部分でも説明しましたが、やはり第1中足骨と第5中足骨の支持性が重要であることがわかります。
ちなみに、踵の崩れが横アーチ低下の原因と様々な書籍で言われています。
先ほどの模型で、踵を床に対して垂直に保持した状態を保ち第2中足骨を押し込むと、舟状骨と立方骨の動きは減少し横アーチの低下が減少しています。
まとめ
横アーチの低下とは、頂点である第2中足骨が低下するのではなく、第1及び第5中足骨が広がることで間接的に低下しているように見える。
次回予告
横アーチパッドの位置はここしかない!
「横アーチの機能を最大限に活かす工夫」とは?
第2弾では横アーチパッドの調整や靴紐の調整について解説していきます。
【参考資料】
1)林典雄(著),運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編,運動と医学の出版社,2018
2)赤羽根良和(著),足部・足関節痛のリハビリテーション,羊土社,2020
3)A.I.KAPANDJI(著),塩田悦仁(訳),カパンジー機能解剖学Ⅱ 下肢原著第6版,医歯薬出版株式会社,2010
4)アシックス スポーツ工学研究所,究極の歩き方,講談社現代新書,2019
運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈下肢編 [ 林典雄 ]
|
足部・足関節痛のリハビリテーション (痛みの理学療法シリーズ) [ 赤羽根 良和 ]
|
カパンジー機能解剖学 2 下肢 原著第7版 [ 塩田 悦仁 ]
|
究極の歩き方 (講談社現代新書) [ アシックス スポーツ工学研究所 ]
|