下腿内側縁の痛みに対するインソールの工夫

スネの内側が痛い

脛骨・腓骨を盛大に骨折した患者さん

こんな感じで骨折し、骨の中に金属を入れ固定する手術をされました。

手術をして5ヶ月が経過

 

 

外来リハビリに来た際に

「ここが痛い!」

と指差したのはスネの内側

 

脛骨の内側縁でした。

 

 

骨折部の痛みであればまずい

と思いましたが、

完全に骨癒合もしており、主治医からは特に制限は設けられていません。

 

 

 

横ブレの大きな歩行

この方の歩行を見てみると、非常に特徴的な歩行をされていました。

 

まず、踵を接地した瞬間から、足底に荷重をする場面で

踵が大きく外側に傾斜

していました。

 

その後、片脚で支える時期を超えたあたりから下腿が大きく内側へ傾斜していました。

いわゆるKnee inです。

 

歩行では特にこの時期に痛みを訴えることが多く、ここに何かポイントがあるのではないかと考えました。

 

 

 

足部の評価

今回評価したのは、

  1. Leg-Heel-Angle(カルカネウスアングル)
  2. 非荷重での足部アライメント
  3. FPI
  4. 母趾伸展テスト

の4種類です。

 

1.Leg-Heel-Angle(カルカネウスアングル)

これは、下腿と踵の傾斜から足部を分析するものです。

この方は、5°内反していました。

つまり、踵がやや外側に傾斜している状態です。

 

カルカネウスアングルとは、床との垂線と踵の成す角度で、これも同様に踵は外側へ傾斜していました。

 

 

2.非荷重での足部アライメント

この評価は、うつ伏せで行います。

距骨を中間位にした状態で、踵骨と前足部の関係を見るものです。

 

この方の足部は、踵と前足部が共に内反していました。

 

 

3.FPI(Foot Posture index)

FPIは、特別な器具を使用せず、安静立位時の足部が回内なのか回外なのかを見極める定量的な評価です。

詳細な説明は省きますが、この方の場合はわずかに回内と判断しました。(+1点)

 

 

4.母趾伸展テスト

母趾伸展テストとは、立位で母趾を他動的に伸展させた時の内側縦アーチの動きを見るものです。

この動きは、ウィンドラスメカニズムと呼ばれるもので、蹴り出しの際に大きな役割を担います。

 

母趾の伸展に伴い、

  • アーチが挙上する
  • アーチが遅延して挙上する
  • アーチが挙上しない

 

アーチ挙上の遅延やアーチが挙上しない場合は、ウィンドラスメカニズムの機能が低下している可能性があります。

 

この方は、母趾の伸展に伴うアーチの挙上を確認しました。

そのため、ウィンドラスメカニズムの機能は維持されていると判断しました。

 

 

 

どう考えるか

本来、スネや足部の内側に症状がある場合、回内足であることが多いです。

 

ですが、この方の踵は外側へ傾斜しており、アライメント的にも回外傾向です。

また、母趾伸展テストの結果からも、回内足である可能性は低いと思われます。

 

 

ボールペンですが足型を取ってみました。

赤い部分はボールペンが入る範囲内で採型できた土踏まず部分です。

やや低いように見えますが、ボールペンが深くまで入らない事を考えると、そこまでアーチが低下しているということもなさそうです。

(ああ、フットプリンターが欲しい笑)

 

 

 

しかしFPI的には回内している事に…

 

 

 

 

 

いろいろ合わせて考えると、 

踵が外側に傾斜していることと、ウィンドラスメカニズムの破綻がないことを考えると、

 

動作上で生じる問題

 

が大きいように思います。

 

 

 

 

 

実際の歩行では、

片脚で支える時期を超えたあたりから下腿が大きく内側へ傾斜しており、このタイミングで症状が強まっています。

 

 

そのため、

 

 

踵接地時に踵が大きく外側へ傾斜し、その後急速に内側へ荷重してくることで内側組織への過負荷となり痛みが出ている

 

 

と考察しました。

 

 

 

 

 

 

インソールによる工夫

インソールの方向性として、2つの事を考えました。

 

  • 患者の主訴であるスネの内側の痛みに対する対策
  • 痛みが生じている原因に対するアプローチ

 

 

 

スネの内側の痛みに対する対策ですが、

これは、急激に足底内側に荷重することで生じるものです。

なので、単純に、内側にかかる荷重を受け止めるよう足部を支えてあげる工夫をすれば良い

と考えました。

 

よって、内側の対策としては、内側アーチパッド及び母趾列安定化パッドを用いて内側列の安定化を図ります。

 

 

 

 

 

次に、痛みが生じている原因に対するアプローチです。

 

踵接地時に踵が大きく外側へ傾斜し、その後急速に内側へ荷重してくることで内側組織への過負荷となり痛みが出ている

 

言い換えると、

急激に内側に荷重してくる原因は、踵をついた瞬間に踵が大きく外側へ傾斜してくる

と言えます。

 

つまり、この踵接地時の踵の外側傾斜を止める工夫を施せば良いことになると思います。

 

 

インソールの方向性をまとめると、

  • スネの内側の痛みに対する対策 = 内側列の安定化
  • 痛みが生じている原因に対するアプローチ = 踵の外側傾斜の抑制

 

 

 

※実際に作成したものは撮影できないため、こちらをご参考ください。

 

 

 

こんな感じでインソールを作成しました(^^)

 

内側列の安定化を図るパッドは、高さが高すぎると

踵の外側傾斜の影響を助長し足底外側への荷重を強くしてしまうため少し低めに設定しています。

 

 

 

 

痛みはどうなったの?

インソールを作成して2日後に来院

その際にはスネの内側の痛みは改善されていました!

その後も、2週間以上経過していますが痛みが出ることは無いそうです。

 

 

症状をその場で改善させることと、原因に対するアプローチが上手くいった症例でした!

 

 

 

いずれにしても、最も重要なことは、

 

患者の訴えをしっかり聞く事

 

そこに結果を出すためのヒントが隠されていると思います。

 

 

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