- 55歳までに踵の感覚が低下する??
歳を取ると、身体の至る所に変化が出て来ます。
それは、足裏の感覚も例外ではないようです。
加齢による足裏の感覚変化を知ることで、足トラブルの予防に活かせると思います。
今回は、歳を取るにつれて足裏の感覚は鈍くなるのか?
鈍くなるとしたら、何歳頃から鈍くなるのか?
ということを、論文を紹介しながら考えていきます。
論文紹介
木村 和樹,久保 晃,石坂 昌大,伊藤 晃洋,塩見 誠,
足底触圧覚の部位別比較と加齢による変化-SWMを使用しての定量的な評価-.
理学療法科学.2015.30.4.p.615-618.
今回紹介する論文は2015年に理学療法科学に掲載された論文です。
背景
Semmes-Weinstein-Monofirament(以下SWM)を使用したこれまでの研究では、健康若年者では性差がなく、踵部が最も感覚閾値が高く、加齢に伴い感覚閾値は上昇すると報告。
↑SWMはこんな道具のようです。
感覚閾値の上昇 = 感覚の低下と考えます。
目的
糖尿病患者のデータを出す前研究として加齢による触圧覚閾値の変化を測定部位別に検討した。
方法
日常生活動作の遂行に支障のない地域在住男性62名、女性174名、236名(472肢)を対象とした。
対象は20-29歳群(33名),55-74歳群(89名),74-94歳群(114名)の3群に設定。
測定部位は左右の母趾・母趾球・小趾球・踵の計8カ所に対して直角に曲がるまで1.5秒間押し付けた。
統計処理
各群の基礎情報は一元配置分散分析後にBonferroni法を行った。
各群の触圧覚閾値の比較はKruskal-Wallis検定を用いた(以下、課題①)。
各群の足底4部位における触圧覚閾値の比較はFriedman検定を用いた(以下、課題②)。
課題①②の下位検定はBonferroni法を行った。
結果
55歳までに足底触圧覚閾値は上昇し、部位別では踵が他の部位より触圧覚閾値が優位に高かった。
年齢ごとの部位別比較では、
55-74歳群、74-94歳群では、踵、小趾球、母趾、母趾球の順に触圧覚閾値が高い結果となったようです。
著者の考察
踵部は歩行の衝撃が加わり皮膚が肥厚し感覚低下が生じやすいと考えた。
母趾・母趾球・小趾球はメカノレセプターが多い。加齢の影響は少なかったと考えた。
55-74歳群と75-94歳群は母子球と比較し小趾球の触圧覚閾値が低かった。
変形性膝関節症の患者は小趾球側の触圧覚閾値が高く、小趾球に体重が加わりやすいと報告されている。加齢やメカニカルストレスにより小趾側のメカノレセプターが減少したと考える。
研究の限界
30-54歳のデータを提示することができなかった。
また、地域在住高齢者を対象にしており、軽度な脳梗塞、腰部疾患、下肢の軽度循環障害など既往に呈していたことも考えられる。医療機関を受診していないため本研究の限界である。
どう考えるか?
50歳を境に踵が前に傾き前足部荷重が増加するという話もあります。
年齢的には、踵の崩れはアライメントだけでなく足底感覚の低下も影響していそうですね。
今回は、足底触圧覚の部位別比較と加齢による変化に関して検討した研究論文を紹介させて頂きました。
年代群毎の人数にばらつきはありますが、先行研究とも一致するような見解が得られているようです。
やはり50歳前後で足に何かが起きている可能性が高そうですね。