【連載企画】足の機能から考える足元の工夫〜外反母趾の原因は踵にあった!〜第3弾 「踵の動きを紐解く

足の機能を重視した靴のフィッティングと踵の倒れこみ・横アーチの調整方法

 

足の機能に基づき評価を行うことの重要性

それは、効果的なインソールの調整や正しい靴の提案など方針を決めるために必要不可欠である。

足の中でも特に重要な「踵」と「横アーチ」の関係とは・・・?

 

 

 

 

 

第3弾では、横アーチ低下の原因とされる踵の動きを紐解きます。

 

 

 

 

踵の崩れと横アーチ

諸説ありますが、踵の崩れこそ横アーチ低下の原因だと私は考えています。

横アーチの低下は、いわゆる開張足と呼ばれ、外反母趾や内反小趾を始めとした様々な足のトラブルを引き起こします。

 

そんな開張足ですが、原因は踵の崩れであるという説がありますが、私もこれに賛成です。

 

第1回目では、横アーチが低下する仕組みについて紹介しました。

第2回目では、そんな横アーチ低下に対する工夫を紹介しました。

第3回では、いよいよ踵の話に触れていきます。シンプルですが非常に重要な踵の動きについて紐解いていきましょう。

 

 

 

 

 

踵のブレ

横アーチ低下の原因には踵が大きく関わっていることがわかってきました。

そこで、踵の崩れについて考えていきます。

 

 

足部を後ろから見てみましょう。

内くるぶし(内果)と外くるぶし(外果)の下をたどっていくと踵があります。

 

 

内果と外果の間には距骨という骨があります。

踵は、距骨の下に位置していますから、

踵自体の内側・外側には骨構造はありません

 

その代わりに、強力な靭帯が多数存在しますが、骨構造と比較すると不安定です。

そう考えると、踵は

 

左右のブレを制動しにくい構造

 

になっていることがわかります。

 

 

踵のブレは、距骨下関節という踵の関節で生じる動きによって判断されます。

踵が内側に倒れることを回内、外側に倒れることを回外と言います。

 

回内・回外の動きは、足部・下肢に対して様々な影響を及ぼします。

 

例えば、内側に倒れこみが強ければ、この倒れこみを止めるため過剰な負荷がかかり内側の組織に何らかの障害を誘発します。

 

 

外側への倒れこみが強ければ、この倒れこみを止めるために過剰な負荷がかかり外側の組織に何らかの障害を誘発します。

 

 

 

 

 

 

踵骨の前傾

踵が前に倒れこむことで、前足部に体重がかかり横アーチが低下します。これは、加齢による影響もあるそうです。

 

アシックスによると、女性は

30代から踵が前傾し、
50歳を超えた頃から顕著に前傾していくそうです。
さらに、踵は内側に倒れるのではなく、加齢とともに内側への傾斜は減少するとしています。

つまり、50歳を超えると、

踵が前に倒れこみ踵の内側への傾きが減少していくということです。

この結果、50歳を超えると、大半の人は足が外側に広がるとされています。

 

 

 

 

 

動きの大前提

ここで、一度動きの大前提について見てみましょう。

歩く、走ることを想定して下の図をご覧ください。

上下左右のブレが大きいと、波線の頂点に到達するたびにブレーキをかける必要が出てきます。

ブレーキをかける際には大きな負荷が生じるため組織に過剰な負荷を強いることになります。

 

このことを考えると、上下左右のブレが少ない方が、速くそして壊れにくいことがわかるとおもいます。

 

 

歩く・走る時のポイントは、いかに最小限のブレで動くかということになります。

 

足部においては、踵を垂直に近づけブレを最小限にすることがカギとなります。

 

 

踵は歩くときに最初に接地する場所です。

つまり、踵のブレは踵をついて体重が乗り始めた瞬間に生じることになります。

 

踵のブレは横アーチにも影響しますから、踵をついて体重が乗り始めた瞬間に内側・外側どちらに踵が倒れるのかを見極めることが重要です。

 

 

 

 

距腿関節の安定性

距腿関節とは、踵とすねの骨(脛骨)がなす関節で、つま先を上にあげたり(背屈)下に下げたり(底屈)する関節です。

距腿関節は、背屈することで安定性が増し、底屈することで安定性が低下します。これは、距骨と脛骨の関節面の構造が影響します。

 

距骨は、前方が広く後方が狭い骨です。

前方は約5mm後方に比べて広いとされています。

 

そのため、背屈するとしっかりと骨構造にはまり込む形となりますから、安定性が増加します。

逆に、底屈すると骨構造から外れてしまうため、大きな可動性を有することとなります。

 

踵が左右にブレたり、前傾するということは、この距腿関節が骨構造的に不安定な状態にあることを示します。

 

 

 

 

FTA(大腿脛骨角)の意義

正常、立位時には大腿骨はやや外側へ傾斜しています。

理論上、脛骨は床に対して垂直となります。

 

この時、大腿骨と脛骨には物理的外反が生じます。

これをFTA(大腿脛骨角)と呼びます。(正常175°)

 

この角度があることからも、脛骨は床に対して垂直であることが理想的です。

そして、脛骨と強力な連鎖を持つ踵も床に対して垂直であることが理想的です。(実際には軽度外反)

 

 

 

 

 

距骨下関節と横足根関節の役割

距骨下関節とは、踵の内側・外側への傾斜に関与している関節です。

横足根関節とは、足の土踏まずに関与している踵の前にある関節です。

 

この2つの関節の役割とは、距腿関節を水平位に保つことです。

距腿関節面が水平位に保持している状態とは、脛骨が床に対して垂直であることを指標にします。

例えば、回外していると、踵骨の内反により距腿関節面は外側に傾斜します。

回内制限がある場合、この踵骨の回外が強制されますから、距骨は内反し荷重軸は内方化します。

 

つまり、回内・回外どちらが悪いというわけではなく、過剰に生じることで距腿関節面を水平位に保持できないことがまずいということになります。

 

 

 

 

まとめ

骨構造的に不安定であるため、踵が前後左右にブレる

距腿関節面を水平位に保持するために、踵は床に対して垂直であることが理想的

 

 

 

 

次回予告

踵がブレなければそれで良い!

踵の機能を最大限に活かす工夫について解説します。

 

 

 

【参考資料】

1)林典雄(著),運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編,運動と医学の出版社,2018

2)アシックス スポーツ工学研究所,おもしろサイエンス 足と靴の科学,B&Tブックス日刊工業新聞社,2018

3)A.I.KAPANDJI(著),塩田悦仁(訳),カパンジー機能解剖学Ⅱ 下肢原著第6版,医歯薬出版株式会社,2010

 

運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈下肢編 [ 林典雄 ]

究極の歩き方 (講談社現代新書) [ アシックス スポーツ工学研究所 ]

カパンジー機能解剖学 2 下肢 原著第7版 [ 塩田 悦仁 ]

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