ランナーと足周りのケガ
ランニングは、市民にとって始めやすい人気のスポーツです。
その反面、脚を故障する人も多いといわれています。
特に、アキレス腱や足裏の痛みを経験したことがある人は多いのではないでしょうか。
アキレス腱の痛みは、エリートランナーでも約50%が経験するそうです。
また、足裏の痛みは足底腱膜炎と呼ばれ、特にかかとの骨の付着部で好発します。
私自身も20キロ以上走ったり、
長距離走において、競技力を向上させるためには、
「故障せずに練習を続けられるか」
がカギとなります。
そのためにも、日々のケアはしっかりと取り組みたいものです。
そこで、アキレス腱や足裏の痛みに対して
・腱の構造と腱炎の特徴
・アキレス腱に対する伸張性収縮運動の影響
・足底腱膜に対するストレッチの効果
について解説し、
日々のケアとして簡単に取り組めるエクササイズをご紹介します。
腱の構造と腱炎の特徴
アキレス腱や足底腱膜の「腱」はコラーゲン繊維で構成されています。
このコラーゲン繊維、通常は腱の走行に沿って平行に並んでおり、それによって腱は最大限に力を発揮することができます。
しかし、腱炎になると、このコラーゲン繊維の並びが乱れると言われています。
コラーゲンの配列
・正常な腱=きれいな配列
・腱炎=乱れた配列
逆に言うと、コラーゲン繊維を整えることができれば、炎症が落ちついているとも言えます。
腱に対するアプローチしては、この配列を整えることを目的に行います。
アキレス腱に対するケア方法
筋肉が力の入った状態で伸ばされることを「伸張性収縮」といいます。
アキレス腱の伸張性収縮運動が、コラーゲン繊維の配列にどのように影響するかを調べた研究では、以下のように述べられています。
反復した伸張性収縮は、腱の血液循環を増加させ、コラーゲン繊維を再配向させた。
低負荷・高回数プロトコルと高負荷・低回数プロトコルとの間で差を認めなかった。 1)
つまり、どんな回数・きつさでやっても、
繰り返し力を入れながら伸ばせば、コラーゲン繊維がきれいに並んでくれるということです。
著者は、過負荷は腱障害の危険因子であることから低負荷・高回数での運動を推奨しています。
では、実際にはどんな運動を行えばよいのでしょうか?
とっても簡単です。
ズバリ、「かかと下げ運動」です。
ポイントは、段差を使ってゆっくり行うこと。3秒ほどかけて降ろしていきます。
玄関の段差や階段でやってみましょう。※必ず手すりや壁に手をついて安全な環境で行ってください。バランスを崩して転倒する恐れがあります。
1セット
・膝を伸ばした状態で15回
・膝を曲げた状態で15回
これを6セット行います。
最初はセット数を減らしても構いません。
週に3回を目安にやってみましょう。
(どうやら頻度を増やしてもあまり効果は変わらないようです。)
ちなみに、写真では裸足で行っていますが、靴を履いた状態でやった方がやりやすいです。
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足底腱膜に対するケア方法
足底腱膜のコラーゲン繊維もアキレス腱と同様に走行に沿って配列されています。
足底腱膜とアキレス腱に対するストレッチの効果を調べた研究によると
ストレッチの種類,頻度に関係なく弾性が上がる 2)
とされています。
つまり、
どんなストレッチをしても、
どれだけやろうとも、
やれば腱がよくなる
ということです。
アキレス腱に対するケア方法でも述べましたが、伸張性収縮がコラーゲン繊維の配列を整えることから、ストレッチによってコラーゲン繊維が整うことで弾性があがっているものと思われます。
また、足底腱膜とアキレス腱は繋がっており 3)、アキレス腱の張力の増大は、
つまり、足底腱膜の痛みを減らしたいなら、アキレス腱ごと伸ばしてあげるのが効果的ということになります。
ということは、足底腱膜に対するケア方法も、、、
「かかと下げ運動」
この運動なら、アキレス腱も足底腱膜も同時に伸ばすことが可能です。
どうせやるなら「かかと下げ運動」でアキレス腱と足底腱膜を同時に伸ばしてやりましょう。
他にも、足の指を立てて正座することも持続的なストレッチとしておすすめです。
まとめ
・低負荷,
・どんな種類,
・どうせやるならまとめて伸張性収縮運動をやろう
【参考文献】
1) 石垣 智恒(2017).伸張性収縮運動がヒト腱の血液循環、コラーゲン繊維配向、および力学的特性に及ぼす影響,東京大学大学院総合文化研究科博士論文.
2) Yuki sugino et al(2023).Effect of plantar fascia-specific stretching and Achilles tendon stretching on shear wave elasticity of the plantar fascia in healthy subjects,Foot Ankle Surg,7;S1268-7731(23)00004-8.
3) Sathish Rajasekaran,Jonathan T.Finnoff(2014). Plantar Fasciopathy:AClinical Review,Springer science+Business Media New York,10.1007/s40141-014-0069-7.
4) Pan W, Zhou J, Lin Y, Zhang Z, Wang Y(2021). Elasticity of the Achilles Tendon in Individuals With and Without Plantar Fasciitis: A Shear Wave Elastography Study.,Front Physiol, 21;12:686631
ランニング日記